あなたと誰かの“こころ”を足して、つなぎあう
いのちいとおし ビハーラ3年半の取り組み
「緩和ケア・ビハーラ病棟」は、開設から3年半、ずっと、余命半年と宣告された人たちのいのちと向き合ってきた。「ビハーラ」とは、サンスクリット語で「やすらぎの場」「休養の場」を意味する。「死が訪れる瞬間まで充実した日々を過ごして頂きたい」と願い実践する医療の現場をレポートする。
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「わずかですが、とてもいい時間でした」。松原淑予さんはそう言いながら、夫の写真を見つめた。スーツ姿で穏やかな表情を浮かべるのは、昨年3月14日に57歳で亡くなった松原通雄・本会前外務部長。ビハーラには、亡くなる前日に入棟した。 通雄さんは2005年夏に胃がんの手術を受けた。一度…続きを読む
「皆、私たちと同じ気持ちなのね」。山口紀久子さんと姉の三知子さんは笑顔で顔を見合わせた。今秋、佼成病院が遺族を招いて実施した病没者慰霊式。参列した紀久子さんは、林茂一郎院長に駆け寄り感謝を伝える遺族の姿を見て、兄の士郎さんがビハーラで過ごした日々を思い返した。 士郎さんは、今年…続きを読む
暖かな日差しが差し込む自宅のリビングで、山崎喜代さんは、夫・泰宏さんの写真を見つめた。写真のまわりには、泰宏さんが愛用していた眼鏡や帽子、万年筆などが飾られ、「孫が持ってきた」というキャラメル2粒とドロップの缶が置かれている。「痛みがひどかったときには、食べることが億劫(おっく…続きを読む
病棟には、ボランティアのほかに、イベントなどを陰から支える人々の存在がある。 年の初めに行う「もちつき」は、佼成病院の喫茶室『パレット』の店主一家の協力が欠かせない。店を開放し、もち米を蒸かすのが大きな役割だ。患者や家族の目の前でもちをつく。時には高齢の患者にもちの丸め方を教わ…続きを読む
病棟に入ると、廊下の壁に写真が飾られている。『私たちボランティアです』。写真の中の6人の女性はピンク色のエプロンを身につけ、微笑んでいた。写真の下にはローテーション表が張られている。ある女性患者が一人のボランティアに「来週の今日、また会いましょうね」と声をかけた。 ボランティア…続きを読む
「大丈夫ですよ。そばにいますからね」。患者のベッドの横で一人の女性が、わが子に語りかけるように穏やかな口調で言った。普段着にエプロン。看護師でも家族でもない。胸のネームプレートには『スピリチュアルケアワーカー(心の相談員)』(以下ケアワーカー)と記されていた。 「スピリチュアル…続きを読む
「母の写真を持ってきたの。見てください」。患者の遺族が看護師に駆け寄った。看護師は写真を手にし、「いい顔してるわねぇ」と目を細めた。この日、遺族たちが続々と病棟の談話室に集まってきた。 病棟では、佼成病院主催の病没者慰霊式に合わせてティーパーティーを開いている。「亡くなったご家…続きを読む
患者に人気の“若き”ヘルパー瀬戸良尚さんは自身のことを「何でも屋」と言う。患者の介助はもちろん、談話室の水槽の掃除やテレビの修理、病棟内に季節感のある飾りつけを行うのも瀬戸さんの役目。今や病棟になくてはならない存在だ。 看護師たちは「瀬戸君は細かい心遣いができ、患者さんにとって…続きを読む
病棟の談話室にオルゴールのメロディーがゆるやかに流れていた。窓を覆う黒い布。画用紙で作った“十五夜”が掲げられ、テーブルでススキが揺れていた。9月25日に行われた「お月見」イベントの演出だ。患者や家族が続々と談話室に集まる。「もうこんな季節になったんだねぇ」。一人の男性がしみじ…続きを読む
「わぁ、きれい!」。12月のある日、女性患者の部屋を訪れた看護師は思わず声をあげた。床には赤いポインセチアの植木鉢が並び、サンタクロースや雪だるまの置物がいたるところに飾られていた。寝たきりになった妻のために夫が部屋にデコレーションを施した。「こっちも見て」と女性がうれしそうに…続きを読む