あなたと誰かの“こころ”を足して、つなぎあう
祈りの系譜-みちのくに刻まれた信仰世界
厳しい自然との共生の中で培われてきた「祈り」の心。縄文の時代から脈々と受け継がれ育まれてきた「祈り」の源を求め、みちのくの地を歩く旅に出た。
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仙台市の中心地にある一番町のアーケード街。繁華街の夜は、行くあてもない若者たちで賑(にぎ)わう。しきりに女性に声をかける男性のグループ、地べたに座りこみギターをかき鳴らす男女のペア。「ここに来っど、人がいっから安心すんだよ」。ギターを抱えた青年が投げやりに言った。 都会のうつろ…続きを読む
夕暮れの羽黒山を歩いた。 旺盛な生命力で芽吹く下草の上に、枯れた木がうなだれている。隣り合う生と死を見つけた。見上げれば、天を指す杉木立が山道の闇を濃くし、雨が顔を濡らした。ふいに舞う風は、森羅万象の息遣いなのか――。山は、じつに多彩な表情を持つ。 羽黒山は、修験道を究める修行…続きを読む
旅の果てに海があった。 舎利(仏の骨)を敷きつめたような白い砂浜に、仏の姿を彷彿(ほうふつ)させる奇怪な岩々。下北半島の西海岸に、約2キロにわたって続くこの奇岩には、その一つ一つに仏の名がつけられている。 仏ケ浦は、もともと仏宇陀(ホトケウタ)と呼ばれた。アイヌ語で「ウタ」とは…続きを読む
磐梯山を間近に望む長瀬川のたもと、福島県猪苗代町関脇集落。ここに、「おんばさま」と呼ばれる子授けの神がいる。その御座(おわ)す場所は、ムラの奥にある優婆堂である。 「先祖の命を代々子孫につないでくれた神様」。そう言って、65歳以上の人たちが、交代で優婆堂の堂守に当たっているとい…続きを読む
人影も見えない夕刻。カラカラと回りだす風車の音に乗って、童の声が聞こえてくる。<一つ組んでは父のため……>。日が没する時、賽(さい)の河原を歩くと、ふとそんな錯覚に陥ることがあるという。 津軽の町の一角に、小さき仏たちの鎮魂の世界があった。青森県金木町の「川倉賽の河原地蔵尊」。…続きを読む
小雪が舞う峠を越えた山里に、雪をかぶった集落があった。四方には悠久として山がある。根子集落。阿仁マタギの、かつての本拠地である。 マタギは、衣食の糧に山でクマやカモシカなどを追った狩猟の民。10人から15人ほどの組織を持ち、雪深く険しい山々を駆け巡った。その姿は、太古、広大なブ…続きを読む
冬の湯殿山に向かった。 気温マイナス7度。雪が舞い、闇夜の底が白くなった。風に飛ばされた雪が、闇の中に揺らいでいる。森羅万象の霊が息づいているように――。 古より、山は、この世でもっとも天に近く神聖な場所だった。山には、人知を超えた神の意志がある。それを知っていたのは、一千年以…続きを読む
いく筋もの大河の流れを懐に擁し、寡黙にして広大なる土地――みちのく。この地の歴史は、縄文の狩人が文化を育(はぐく)んだ時より流れ始めた。やがて人々の心の中に、自然に対する畏(おそ)れが生まれ、庶民の祈りの情念から、さまざまな信仰が誕生した。現代の人々は、占いに心引かれ、神仏にす…続きを読む