尾木ママのだから子育てはおもしろい!

思春期の難しさは、子どもの成長の証。尾木直樹さんによる、悩めるお父さん・お母さんへのアドバイスです。

検索


尾木ママのだから子育てはおもしろい!

グローバル社会を生き抜くために 尾木直樹

  • 内省
  • 歓喜
  • 親子
  • 勉強・受験
  • 出産・育児

わがままな子でちょうどいい
 
ここ数年、街で外国の方を見かけることがとみに増えました。2020年に東京オリンピックが開かれる頃には、日本を訪れる外国人の数はさらに増加するでしょう。来るグローバル社会に求められる力とは何でしょうか。その一つに、自分を大事にする姿勢があげられます。
 
日本は島国という地理的・歴史的な背景を持つことから、個の意見や立場より、全体や組織、協調性を大事にする文化や社会の特性があります。個人のわがままを許さない風潮もここに由来するようです。子どもに対しても、例えば公共の場などで騒ぐ子どもやその親などに対し、周囲の目が厳しい傾向もあります。もちろん周囲への配慮は必要ですが、子育ては本来、社会全体でするもの。周囲の寛容さ、温かい目や手助けがもっとあっていいのにと僕は感じています。
 
とりわけ乳幼児期は、わがままなくらいがちょうどいいんですよ。例えば二、三歳くらいの子どもが食事中、 「これ嫌い」と言って食べない、時にはお皿ごとひっくり返す。ママとしては、せっかく頑張って作ったのに、と頭にきちゃいますよね。でもね、これは子どもに「自分」が育ってきている証拠なんですよ。むしろ、ママが「あなたはこれが好きではないかもしれないけど、体にいいから食べてね」と言ったら、素直に「はい、いただきます」なんて従う子どもは不気味よ(笑)。こういう子は、親や大人の顔色を窺ってばかりいて、自分の感情や意思がありません。これは心理学用語で「イイコ症候群」と呼ばれています。このまま成長して思春期を迎えると、「自分」が見えなくてもがき苦しむ可能性もあるんです。そして、大学生になって就職活動をするとなったとき、「あなたはどんな時、喜びを感じますか?」と問われ、これまでの自分を振り返って、ハッと気が付く。「これは私の喜びじゃなくて、ママの喜びだったんじゃないか」ってね。自分の感情や意思が空っぽだったことに気付き、慌てて悩む現象は、優秀といわれている子ほど多い傾向にあります。僕はこういった「イイコ症候群」の大学生に数多く出会ってきました。

子どもに問いかける
 
元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんは、お母さまから「ママはこう思うけど、あなたはどう?」と常に問いかけられてきたそうです。とても素晴らしいお母さまですね。親が自分の意見を押し付けず、子ども自身がどう考えるのか問いかけることで、自分の頭で考える力が育ちます。さらに、自分で選択し決定する機会を多く設けてあげるといいですね。そして、子どもが自分で決めたことがうまくいった時には「よかったね」と褒め、失敗した時には「大丈夫よ、また次があるからね」と励ます。「自己決定」の機会を重ねることで、自己責任感が育まれ、自己肯定感がより強く、しなやかになるのです。
 
これまでの日本では、みんなと同じであることが良しとされてきました。それが成功の条件であり、幸せになれる保証でもあった。でも、これからは「個人主義」の時代です。個が尊重されると同時に、個が確立していることが問われてきます。自分のことしか考えない利己主義と違って、個人主義とは、あくまでも「自分」「個」を大事にすること。だからこそ、他人も大事にできるのです。一見、わがままに見える子どもの言動も、そのなかにあるその子の意思や感情を見つけ尊重し、個性を丁寧に育ててあげたいですね。

キーポイント
自分の意見を自信をもって言える大人を目指して、親の考えを押し付けず、子どもに自己決定させるチャンスを増やしていきましょう。


尾木直樹(おぎ・なおき)
1947年滋賀県生まれ。法政大学教職課程センター長・教授。教育評論家。臨床教育研究所「虹」所長。中高の教師として、22年間子どもを主役としたユニークで創造的な教育実践を展開。現在も大学で教壇に立つかたわら、「尾木ママ」の愛称で親しまれ、テレビ番組、CMなどで活躍。これまで執筆した教育関連著書(監修含む)は200冊を超える。


この記事を誰かに伝えたいですか?