露の団姫の「毎日が仏教ですねん」

上方落語の高座をはじめ、テレビ・ラジオなど多方面で活躍中の露の団姫(つゆの・まるこ)さん。プロの噺家、天台宗僧侶、そして一児の母という三つの生き方を自在に歩んでいます。「法華経は、わが人生の道しるべ」――日々の暮らしの出来事を教えに照らし合わせることで、仏教が身近なものに感じられるコミカル・エッセイ。

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露の団姫の「毎日が仏教ですねん」

信仰病にご注意を!! 露の団姫(つゆのまるこ)(落語家・僧侶)

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「病は気から」といいますが、世の中には「良い気」から起こる病もあるのをご存知でしょうか? それが、最近密かに感染を広めている病……「信仰病」です。「え!? そんな病気、聞いたことないわ!」という方、失礼しました。実はこの「信仰病」、何を隠そう私、露の団姫の命名なのです。過日、本誌の企画で、「夫源病」を提唱する医師の石蔵文信先生と対談させていただきましたが、みなさんには、ぜひ「信仰病」についても知っていただきたいと思い、今回ご紹介することにしました。ではまず、その主な症状を見ていただきましょう。

先日、ある本を読んでいると、「解説」という文字が目に飛び込んできました。信仰病の因子がない人であれば、これを普通に「かいせつ」と読むのでしょうが、私の頭はすぐさまこの字を「解脱」と認識し、「げだつ」と読んでしまいました。これこそ信仰病の特徴で、普段から仏教に親しんでいるため、「解説」よりも「解脱」という漢字を見る機会のほうが多く、こうした症状が起こってしまうのです。
 
ショッピングモールへ行っても、この病はたびたび顔を出し、買い物の足を止めます。エレベーターの音声案内で「三階」と聞けば「三界萬霊」(この世のあらゆる霊)を連想してしまいますし、館内放送で「ご入場の際は……」と流れると、即、「ご入定」(高僧のご入滅)をイメージしてしまいます。極め付きは、ドラッグストアで「アミノ酸」のCMの声が「阿弥陀さん」に聞こえたこと。この時はさすがに、重症であることを自覚しました。
 
また、クリスチャンである夫の豊来家大治朗も、この病に慢性的に罹患しています。先日も、スーパーのレジで夫が一瞬立ち止まったので、「どうしたの?」と聞くと、「清算と聞いて、思わず〝聖餐式〟(最後の晩餐を模したキリスト教の儀式)が思い浮かんでしまいました」と言いました。他にも、「経験」と聞けば「敬虔」という文字が頭に出てくるそうなので、こちらもまた重症です。ちなみに夫はここ五、六年、ペン字教室にも通っているのですが、先生から「清書をしてください」と言われると、すぐに「聖書」が連想されるそうで……。もう、これではキリがありません(笑)。
 
キリスト教といえば、知り合いの神父さまも立派な信仰病です。神父さまというと、結婚式で新郎新婦に「あなたは愛を誓いますか?」と語りかける言葉でお馴染みですが、一般の結婚式で司会の方から「それでは、新婦の……」と言われると、思わず自分のことだと思ってしまうそうです。
 
さらに、この病は人間だけでなく、スマホやパソコンにも感染します。私のパソコンは、「そうじょうこうか(相乗効果)」と打ち込むと、必ずといっていいほど「僧正効果」と出てきますし、夫のスマホは「上方落語協会」を「上方落語教会」と誤変換してしまいます。上方落語教会って、どんな教会やねん! と思わずツッコミをいれてしまいたくなりますね。
 
みなさまも、身に覚えはありませんか? 例えば、鮮魚売り場でホッケを見て、思わず心のなかでお題目をお唱えしたことはないでしょうか。そこまでいったら、初期症状どころか、もうすでに重病です。「え! そんなこと、どうやって立証するの?」と思われた方。いえいえ、みなさんは信仰病であることを立証する必要はありません。なぜなら、信仰によって“立正”する(正法を心のなかに打ち立てる)ことのほうが大切なのですから♪
 
発症すると効果的な治療法はなく、むしろその“症状”が病みつき(?)になってしまう信仰病。みなさま、くれぐれもご注意くださいませ。以上、〝僧職〟系女子・露の団姫からのお知らせでした☆

〈つづく〉



プロフィル 露の団姫(つゆのまるこ)
1986年生まれ。上方落語協会所属。高校卒業後、噺家になるため露の団四郎に入門。大師匠である二代目露の五郎兵衛宅で内弟子修行を積む。落語の高座、テレビ、イベント出演多数。2011年に比叡山延暦寺で出家し、天台宗の僧侶となる。プロの噺家として、尼さんとして、多方面で活動中。一児の母でもある。著書に『露の団姫の仏教いろは寄席』(佼成出版社)、『法華経が好き!』(春秋社)ほか。
露の団姫 公式ホームページ http://www.tuyunomaruko.com/

『やくしん』2017年10月号(佼成出版社


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