いのちを尊ぶ社会をめざしてIV

2025年、日本は国民の4人に1人が75歳以上という超高齢社会を迎えるといわれています。介護職の担い手不足、老老介護、介護離職などの問題が顕在化するなか、”介護”の現状を各分野の専門家から学び、だれもが尊厳をもって生きられる社会の実現に向けた提言をいただきます。

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いのちを尊ぶ社会をめざしてIV

介護保険の申請から利用まで 小山朝子(介護ジャーナリスト)

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「あのー、介護保険の申請をしたいのですが」

昨年の暮れも押し迫ったある日、私は夫と地元の地域包括支援センターを訪れました。理由は義父母に代わって介護保険の認定申請を行うためです。

「介護が必要な人を社会で支える」ことを目的に2000年からスタートした介護保険制度。同制度では、支援や介護が必要な状態と認められれば、ヘルパーらが自宅に来て生活の手助けをしてくれる「訪問介護」などのサービスを受けられます。

介護保険制度の運営主体(保険者)は、市町村と特別区です。一方、介護保険制度を利用できる被保険者は、65歳以上の「第一号被保険者」と40歳から64歳までで医療保険に加入している「第二号被保険者」に分けられます。第二号被保険者の場合、特定疾病(末期がんや関節リウマチなど16種類の疾病)によって介護や支援が必要だと認められた人が対象です。

同制度に基づくサービスを利用する人の自己負担額は、支給限度額の範囲内であれば支払った介護サービス費の1割(一定の所得がある人は2割)です。残りの9割は、税金と被保険者(40歳以上のすべての人)が納める保険料で賄われているのです。

介護保険制度に基づくサービスを受けるには、利用者が住む自治体の窓口や地域包括支援センターでの申請が必要で、家族が代わりに行うこともできます。その際は、事前に確認の電話をしておくといいでしょう。このことで持ち物の不備を防ぐことができ、担当者もスムーズに対応してくれます。

申請後、介護保険認定調査員が自宅を訪れ、心身の状況などについて調査します。調査員の前では、本人がいつもと違う行動をとることもあるので、できる限り家族も立ち会い、普段の様子を伝えることをおすすめします。このとき、本人の様子についてメモしておいたり、写真や動画で残しておくと、それを見ながら具体的に伝えることができます。

この後、介護サービスの必要度(どの程度の介護サービスを行う必要があるか)を判断する要介護認定が行われます。要介護認定には二段階審査があります。訪問調査の結果と主治医の意見書がコンピューターに入力され、全国一律の方法によって審査されるのが一次判定です。

さらに、一次判定の結果と主治医の意見書に基づき、専門家らで構成される介護認定審査会が判断する二次判定です。

申請からおよそ30日以内には、要介護認定の結果が判明します。介護保険に基づくサービスが必要ないと認められる「非該当」、「介護予防サービス」が受けられる「要支援1・2」、「介護サービス」が受けられる「要介護1~5」の区分に分けて認定されます。

先ほど、サービスを利用する人の自己負担額について、「支給限度額の範囲内であれば支払った介護サービス費の一割」と紹介しましたが、この支給限度額というのは前述の要支援(二段階)、要介護(五段階)の区分によって決められている一か月ごとの上限額のことです。

介護保険に基づくサービスには医療・介護スタッフが訪問するサービスのほか、日中の一定時間、食事や入浴などのサービスを事業所で受ける通所介護(デイサービス)、施設や医療機関に短期間宿泊する短期入所のサービスのほか、介護用品や福祉用具のレンタルなどもあります。

どのような介護サービスをいつ、どれだけ利用するかを決める計画を「介護(予防)サービス計画書」といい、現場では「ケアプラン」と呼ばれています。「要支援1・2」の人が対象の「介護予防ケアプラン」は地域包括支援センター、「要介護1」以上の認定を受けた人が対象の「ケアプラン」は介護支援専門員(ケアマネジャー)がいる居宅介護支援事業者に依頼します。困りごとがあったら遠慮なく地域包括支援センターの担当職員やケアマネジャーに相談しましょう。

「介護のサービスがここまで進んでいて、こんなに助かるものだとは知らなかったよ」。親が利用する介護保険のサービスについて知った私の夫は、そう呟いていました。

【プロフィル】
小山朝子(こやま あさこ)
東京都生まれ。介護ジャーナリスト、介護福祉士。約10年祖母を介護した経験から、執筆、講演を行ない、テレビ・ラジオに出演。現在、日本在宅ホスピス協会役員、東京都福祉サービス第三者評価認証評価者などを務める。「ワーク介護バランス(全3巻)」(旬報社)ほか著書多数。


『佼成』2017年8月号 佼成出版社


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