露の団姫の「毎日が仏教ですねん」

上方落語の高座をはじめ、テレビ・ラジオなど多方面で活躍中の露の団姫(つゆの・まるこ)さん。プロの噺家、天台宗僧侶、そして一児の母という三つの生き方を自在に歩んでいます。「法華経は、わが人生の道しるべ」――日々の暮らしの出来事を教えに照らし合わせることで、仏教が身近なものに感じられるコミカル・エッセイ。

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露の団姫の「毎日が仏教ですねん」

「防災」も「坊さん」も大切な務め!? 露の団姫(つゆのまるこ)(落語家・僧侶)

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先日、気心の知れたお坊さん10人ほどで会食をする機会がありました。あれやこれやと近況を報告しながら食事を楽しみ、気が付けば、話題は「うちのすごい檀家さん」になっていました。といっても大企業の社長さんや著名人ではありません。信仰に熱心でお坊さんも頭が下がるような檀家さんや、一風変わった生き方で信仰生活を楽しむ檀家さんなどのことです。

特に盛り上がったのは〝お仏壇へのお供え物を非常食にしている〟という檀家さんの話。この方は、乾パンなどの非常食や、懐中電灯などの防災セットを仏壇の横に常備しているそうです。そのうえ、旅行に行けば日持ちのする食べ物をお土産に買ってきて、仏壇にお供えするのだといいます。そして、新しいお土産が増えると、古いものから食べていくとか。ですから、仏壇の前には常にたくさんの食べものが積まれており、上手に食糧の備蓄ができているということでした。

これには、我々お坊さんたちも「天才!」と納得。なぜなら、家庭の中で「仏壇」は身近な存在ですし、何より「いただきものやお土産は、まず仏壇にあげてから……」という日本人の良き習慣と信仰心を上手に組み合わせた、素晴らしい防災の取り組みだと感じたからです。

あまりにもナイスな「仏壇備蓄」のアイデア。思わず、『地震だヨ! 仏壇集合!』という標語(?)が頭に思い浮かんできました。緊急時に家族が忘れない合言葉としては、こういう分かりやすいもののほうが覚えやすくていいのかもしれません。 

近年、仏教界では「防災」がお坊さんの取り組むべき大切なテーマの一つとされています。東日本大震災のときに、お寺に避難してこられた方がたくさんいたことから、僧侶も積極的に防災に取り組むべきではないか、という風潮が生まれたようです。

そのため、お坊さんのなかには、防災の知識と技能を備えた「防災士」の資格を取得する人が増えています。私も仲間うちから「団姫(まるこ)さんも防災士の資格取りーな」と声をかけられるようになりました。まだまだ勉強不足で、とても資格は取れそうにありませんが、もし防災士となった暁(あかつき)には、名刺に「〝坊〟災士」と書こう、などと妄想を膨(ふく)らませています!! ……こんなことばかり言っていたら、「そんなことを考えている暇(ひま)があるなら、さっさと勉強しなさい」と、お叱りを受けそうですね。

真面目な話ですが、お坊さんが防災に携わることは、ある意味、法華経の教えにもかなっているように思います。「妙法蓮華経観世音菩薩普門品(みょうほうれんげきょうかんぜおんぼさつふもんぽん)第二十五」で、お釈迦さまは観音菩薩さんについてこう言われています。
「たとえ人びとが苦難に遭(あ)おうとも、観音の力はことごとく世の中の苦から人びとを救うでしょう」

私たち法華経に生きる者は、仏に「成(な)る」ことを目標とします。だからこそ、常日頃から自分の役割の中でそのお姿に近づこうとする努力が大切なのです。お坊さんが災害時に積極的に活動するのは、人びとを救うことであるのはもちろん、観音さまのお姿に近づく一つの修行でもあるのではないでしょうか。

いずれにしても、災害は忘れた頃にやってきます。どんなときでも心を落ち着けてお題目をお唱えし、仏さまを念じましょう。きっと仏さまが守ってくださるはずです。

そして、私たちお坊さんも日頃から防災に努めますので、皆さまも冒頭の檀家さんのように、仏壇を利用した「仏壇備蓄」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。昔から「備えあれば憂いなし」と言われますが、これからの仏教徒は「供えあれば憂いなし」ですね☆

〈つづく〉



プロフィル 露の団姫(つゆのまるこ)
1986年生まれ。上方落語協会所属。高校卒業後、噺家になるため露の団四郎に入門。大師匠である二代目露の五郎兵衛宅で内弟子修行を積む。落語の高座、テレビ、イベント出演多数。2011年に比叡山延暦寺で出家し、天台宗の僧侶となる。プロの噺家として、尼さんとして、多方面で活動中。一児の母でもある。著書に『露の団姫の仏教いろは寄席』(佼成出版社)、『法華経が好き!』(春秋社)ほか。
露の団姫 公式ホームページ http://www.tuyunomaruko.com/

『やくしん』2017年6月号(佼成出版社


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