露の団姫の「毎日が仏教ですねん」

上方落語の高座をはじめ、テレビ・ラジオなど多方面で活躍中の露の団姫(つゆの・まるこ)さん。プロの噺家、天台宗僧侶、そして一児の母という三つの生き方を自在に歩んでいます。「法華経は、わが人生の道しるべ」――日々の暮らしの出来事を教えに照らし合わせることで、仏教が身近なものに感じられるコミカル・エッセイ。

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露の団姫の「毎日が仏教ですねん」

朝のお勤めが、より有り難くなりましてん♪ 露の団姫(つゆのまるこ)(落語家・僧侶)

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年末年始、施設に入所している祖母をわが家へ招き、年越しをしてもらいました。以前も紹介しましたが、祖母は現在、82歳。体は元気なので、いわゆる「サービス付き高齢者住宅」に入居し、施設のお友だちと散歩やおしゃべりを楽しむ毎日です。

祖母は施設に入る前、大きなお仏壇を持っていました。しかし、そのサイズでは施設に持ち込めません。そこで、私がそのお仏壇を引き取ることになり、同時に先祖代々のお位牌も引き継ぐことになったのでした。

それからというもの、祖母はわが家へ遊びに来ると、私と一緒に法華経の「自我偈」とお題目をお唱えするようになりました。

そんな祖母に、今回、以前から気になっていた「ご先祖さまの信仰」について聞く機会がありました。祖母の実家の「宗派」が日蓮宗であることは知っていましたが、ご先祖さまの「信仰心」までは知らなかったのです。どういうことかというと、檀家制度というのは時の為政者が決めたものなので、必ずしも「宗派」イコール「信仰」とは言いきれないのです。

例えば、夫の実家の宗派は浄土真宗ですが、夫はキリスト教を信じていて、洗礼を受けてクリスチャンとなりました。同じように、「実家は日蓮宗だけど、信仰はお念仏」という人もいれば「実家は浄土真宗だけど、法華経が好き」という人もいます。

もちろん、先祖代々の宗派を熱心に信仰されている方もたくさんおられますが、私は基本的に家の「宗派」と個人の「信仰」とは別モノと考えてきました。自分の信仰心は誰かに決められるものではありませんからネ!

そんな気持ちもあって、祖母にご先祖さまの信仰について尋ねてみて、分かったことがありました。それは、檀家制度が始まるずっと以前から、私のご先祖さまは法華経を信仰してきたということです。つまり、誰かに決められた制度の中で法華経を信じるようになったわけではなく、自ら法華経の信仰に生きてきたということです。

そう思うと、翌日から朝のお勤めがビックリするほど有り難くなりました。これまでも法華経を読誦し、仏さまに捧げる喜びはありましたが、それにプラスして、〈私のご先祖さまも法華経が好きやったんや! 法華経を聞いて喜んではるやろな♪〉と思えるようになったのです。法華経を信じる者として、理屈ではなく、ダイレクトにご先祖さまとつながったような気がしました。

祖母からご先祖さまの信仰を教えてもらえて、本当に有り難いお正月となりました。
「ご先祖さまを毎日拝んでくれて、ありがとうね」─そんな祖母の言葉に、祖父亡きあと、祖母は「私がやらねば」と使命感をもって、一人、お仏壇を守ってきたのだなと感じさせられました。
そこで「いいよいいよ。だって、私はお坊さんだし、ご先祖さまを供養するのは当たり前のことだから! これからは私がしっかり拝んでいくから安心してね」と伝えました。
すると祖母も「ああ、そうか。ハトちゃん(私の本名にちなむ愛称)を、孫や、孫やと思っていたけれど、お坊さんやもんね。じゃあ、『有り難う』やないね。えーと……こういうときはなんて言うんやっけ?」
「え? なんて言うんやっけ? って?」
「ほれ、あの、ドラマとかでよくある……、ああ、思い出した! 『お勤め、ご苦労さまでした』やね」

〈おばあちゃん、それでは、違う意味になってしまうんやけど……!?〉

これからも、法華経が大好きだったご先祖さまに対して、毎日しっかりと、法華経の読誦を捧げていきたいと思います☆

〈つづく〉



プロフィル 露の団姫(つゆのまるこ)
1986年生まれ。上方落語協会所属。高校卒業後、噺家になるため露の団四郎に入門。大師匠である二代目露の五郎兵衛宅で内弟子修行を積む。落語の高座、テレビ、イベント出演多数。2011年に比叡山延暦寺で出家し、天台宗の僧侶となる。プロの噺家として、尼さんとして、多方面で活動中。一児の母でもある。著書に『露の団姫の仏教いろは寄席』(佼成出版社)、『法華経が好き!』(春秋社)ほか。
露の団姫 公式ホームページ http://www.tuyunomaruko.com/

『やくしん』2017年3月号(佼成出版社


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