介護の悩み相談室 ゆる介護でいこう!

介護の場では、イライラを認めるところから、よりよい関わりが始まると思います。ぜひゆるりと力を脱いて、気持ちが互いに安らいでいけますように。

検索


介護の悩み相談室 ゆる介護でいこう!

男一人で親の介護をするのは無理なのでしょうか 回答者/柳本文貴・NPOグレースケア代

  • 不安
  • 葛藤
  • 苦悩
  • 親子
  • 老後

質問
「85歳の母と二人暮らしです。私が仕事に出かけている間はデイサービスやショートステイを、食事に関しては配食サービスを利用しています。それほど手はかかりませんが、忙しいときに同じ話を繰り返されたり、探し物につき合わされたりすると、イライラしてつい大声で怒鳴ってしまうことがあります。心の持ち方を教えてください」

永井次郎さん(仮名・62歳)


答え 優しくなれないときもあります。頑張り過ぎないことが吉

永井さん、ご相談ありがとうございます。日々、同居のお母さまの介護を担っているとのこと、大変ですね。すでにデイサービスや配食サービスなど、上手に活用されているご様子。「それほど手はかからない」と言えるのは、簡単なようでなかなか難しいことです。ケアマネジャーさんらと相談しながら、毎日の暮らしを組み立てておいでのようですね。


イライラする自分はダメではない

さて、ご質問の件、とても悩ましいです。食事や着替えの世話など、身体面の介助はこなせても、認知症の症状には、どう対応してよいか分からなくなるものです。例えば、「薬を飲んだかしら?」「飲んだから、大丈夫だよ」。その1分後にまた「薬、飲んだかしら?」「飲んだから大丈夫……」と、10回、20回も続くと、どんな人格者でも耐えられません。探し物もよくあります。財布や診察券を一緒に探すのもうんざりですが、そのうち「あんたが盗ったのでは?」と疑りはじめる始末。いいかげんにしろーッ‼ と怒鳴りたくなって当然です。

まず大事なのは「優しくなれなくてもいい」と開き直ることだと思います。認知症になったのは、本人のせいではないのだから、我慢して優しくしないと、育ててくれた親だし……という気持ちも大切ですが、イライラする自分を責める必要はありません。フツーに親子ゲンカをしてもいいのです。でもしょっちゅうやり合うのは考えもの。母に悪いというより、自分の気分がよくならないから。以下、イライラしないで済むコツを3つお伝えします。

1.話のリピートは、親身に聞き流す

話はちゃんと聞きなさい! と、昔、お母さまに教えてもらったとしたら、それは棚上げしてOK。毎回きちんと聞いてくたびれるよりは、親身に聞くフリだけして、適当に聞き流すほうが、気力が長持ちします。お母さまは、話の中身の返事を求めているのではなく、不安とか落ち着かない気持ちに寄り添って欲しいのが本音。表情を真似たり、言葉をオウム返しにしたりしながら、親身にうなずいて見せましょう。聞き流しても、大丈夫。お母さまもこちらの言うことなんて全然聞いてないですから!

2.「すぐ忘れること」を忘れない

話の繰り返しでは、聞いているほうは同じことを何度も……と思いますが、話をしているご本人は毎回初めての気分で喋っています。直前に喋ったことや聞いたことを忘れるのが認知症です。繰り返しにイライラして怒鳴ったら、本人はいきなり怒鳴られたと思ってビックリし、気分を害してさらに意固地になります。「すぐ忘れること」を怒っても変えられません。そのことを受け入れて、周りが忘れないようにするほうが吉です。

3.認知症でも、機嫌は直る!

「薬、飲んだかしら?」「飲んだから大丈夫」。そんなやりとりも、ゆるゆると対応を変えてみます。「飲まなくても大丈夫!」「何度も飲んだら元気になり過ぎ!」と答えてみたり、お薬カレンダーを使ったり、空き袋を取っておいたり、楽しい話をして気をそらしたり。明るく力を抜いた対応をしていると、そのゆるさに安心して、お母さまもなんとなく「よく分からないけど、まあ、いっか」という気分になりやすいです。

認知症があってもなくても、どうお互いに機嫌よく過ごすかが大事。永井さんも、どうか頑張り過ぎないでくださいね!


柳本文貴(やぎもと・ふみたか)
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員。一九七〇年、新潟県生まれ。大阪大学人間科学部卒。障がい者の作業所、老人保健施設、認知症グループホームを経て、二〇〇八年にグレースケアを設立。長時間・泊まりケア、娯楽ケア、医療的ケア、研修事業などに取り組む。著書に『認知症「ゆる介護」のすすめ』メディカ出版)など。


この記事を誰かに伝えたいですか?