生きる力の源泉

生きるために必要な力とはなんでしょうか。その力はどこからわいてくるのでしょうか。 このコーナーでは、算命学カウンセラーの中森じゅあんさんがコーディネーター役になり、各界で活躍されている方々をゲストに迎えて、私たちが「本来的に生きる意味」を再確認し、「どう生きるか」をあらためて考えていきます。

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生きる力の源泉

中森じゅあん×有田秀穂 対談【後編】 だれにもできる脳改革。脳が変われば、心も体も元気!

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第二回は、東邦大学医学部教授で、坐禅(呼吸法)と脳内セロトニン神経の関係を研究している有田秀穂さんがゲストです。(撮影協力/セロトニン道場)

プロフィル

有田秀穂(ありた・ひでほ)
東邦大学医学部統合生理学教授。東京大学医学部卒。東海大学医学部内科で臨床に、筑波大学基礎医学系で脳神経の基礎研究に従事した後、ニューヨーク州立大学に留学。脳内セロトニン研究の第一人者で、セロトニン道場の代表も務める。雑誌、テレビでも活躍。著書に『瞑想脳を拓く』(佼成出版社、井上ウィマラ氏との共著)、『ストレス すっきり!!脳活習慣』(徳間書店)、『仏教と脳科学』(サンガ新書、スマナサーラ氏との対談)など多数。

中森じゅあん(なかもり・じゅあん)
日本算命学協会代表。バイオシンセシス・ボディサイコ・セラピスト。「灯(とう)の会(え)」主宰。ワークショップ、セミナー、個人セッション、講演、エッセイやメッセージの執筆など、多岐にわたる分野で活躍。幅広い女性層から支持を得ている。著書に『中森じゅあんの算命学入門』(三笠書房)、イギリス、アメリカ、中国でも翻訳された『天使のメッセージ』シリーズ(大和出版)は世界で愛読されている。『天使の愛』(中公文庫)など多数。


ドーパミン物質の功罪

中森
先生のお話から、私たちの脳の機能というものが、いかに優れたものであるかがわかりました。そこでふと思い出したんですが、最近の日本人の自然治癒力とか免疫力が、以前と比べ低下しているそうですが、セロトニンについてはいかがでしょうか。

有田
セロトニンの活性化には、太陽の光とリズム性の運動という二大因子が欠かせません。しかし、1980年代ごろからパソコンの普及によって、私たちの生活環境が大きく変化してきました。とくに体を動かさない人が多い。これは非常にまずい現象で、セロトニン欠乏脳という人が増えてきているんです。
職場で、ほぼ一日中パソコンの前に座り、動かすのは指先だけ。多かれ少なかれ、そういう時代になってしまった。
確かに、パソコンは便利です。買い物もできるし、情報も集まる。世界の人とネットで繋がれる利点もある。部屋に閉じこもっていても大抵のことはできてしまいます。

中森
キャリアウーマンたちのなかには、勤め先から帰宅すると、まず真っ先に、無意識のうちにパソコンのスイッチを入れてしまう習慣がついているという人が多いそうです。

有田
パソコンや携帯電話は、依存をつくりますね。仕事でパソコンに向かい、帰宅しても個人のパソコンを開いたり、ゲームをしてしまう。じつはそれがセロトニン欠乏脳の症状でもあるんです。変な話、一生懸命に真面目に仕事をやる人ほど、セロトニン神経の働きが弱くなってくるんです(笑)。「うつ」の症状を発症することが多い職種はIT産業だといいます。5人に1人が予備軍も含めて「うつ」らしいんです。
つまり、セロトニン神経が非常に弱った状態というのは、朝起きても大脳が目覚めない、気持ちもやる気が起きない、だんだん仕事もしたくなくなってくる。これはもう「うつ」状態ですね。そして、夕方以降になると、些細なことでキレてしまうことがある。

中森
私のまわりでも、真面目で、繊細で周囲への気配りをする人のほうが悩んだり疲れやすかったり、自由気ままで神経が太い人は元気だったりします(笑)。

有田
脳科学で考えるとき、脳の中ではセロトニンだけではなくて、ドーパミンという脳内物質がすごく重要な役割をしているんです。人間が意欲をもって、自分のやりたいことや夢に向かって突き進んでいるときに出てくる物質です。そして、それが達成されたときにさらに多く分泌される。まさに「バンザーイ!」のときです。
このドーパミンというのは、夢やチャレンジ精神をもって日々を過ごす源の物質ですから、人間の生活に欠かせません。しかし、ちょっと困った一面も持っている。じつは、ドーパミンはときに暴走するんです。その症状が依存症です。
薬物中毒と似ていますね。「もっと欲しい」という気持ちが際限なく湧いてきてしまう。ドーパミンのある意味、落とし穴といえるでしょう。ギャンブル依存症とか、マネーゲームも一種の依存症です。ドーパミンはすばらしい働きをもっていると同時に、一つ間違えるとコントロールの効かないものになってしまう恐ろしさも持ち合わせているんです。
この暴走ドーパミンをどうしたら抑えられるか。それがセロトニンなんです。

中森
一時期、私がカウンセリングした女性に多かったのが、買い物依存症の人でした。宝石を買っても、すぐにほかの宝石が欲しくなるんだそうです。でも、買ってしまうと、その宝石にはまったく興味がなくなってしまう。つまり「買う」という行為そのものがやめられないそうなんです。


他者との共感という幸せ

有田
そう、買ったときはうれしいんですね。手に入れるまでが重要で、手に入れる渇望状態のときにドーパミンがたくさん分泌されてしまう。まあ、いまの企業もドーパミン原理で動いていますからね。家電やパソコンの類なんか、もうどんどん新しい商品を出して人びとの購買意欲をあおる。
しかし、それじゃあいけないなと私たちは気づき始めていますよね。「断捨離」なんていう言葉が出てきたのも、日本は世界有数の物が豊かな国になったけれども、私たちが生活面でどれだけ幸せを感じているかという疑問を抱えているからでしょう。
だから幸せって二つあるんでしょうね。一つはドーパミンによって得られる幸せ。これは夢を抱いて一生懸命に努力をしているときと、そして手に入れたときの喜び。その繰り返しによって満たされる喜び。だけれども、そこにはいま言ったような落とし穴もあるから、気をつけなければならない。そしてもう一つ。セロトニンによる幸せです。
セロトニンによる幸せって、ターゲットは物じゃなくて人です。他者との共感。これがセロトニン的なんです。他人のために何かしてあげると、私たちはなんとなく、ほんわかとした幸せを感じるじゃないですか。他人のために何かするときに、お金の見返りだとか、「ありがとう」の言葉を求めていると、これはドーパミン的になってしまう。ところがそうじゃなくて、見返りなどをまったく求めない、思いやりや親切な行い。私たちはこの無償の行為で、とても幸せな気分になれる。そういう脳を私たちはだれもが持っているんです。それが、まさにセロトニン神経の活性化につながっているんですね。人間が具えた特別な機能だと考えていいでしょうね。


井戸端会議と赤ちょうちん

中森
見返りを求めないで他者のために何かをすると幸せを感じられる、そんな脳を私たちはみな具えているということをきちんと知って、そしてそれを意識して生きることは、とくにいまの社会では必要で大切なことですね。
先生はご著書のなかで、母親が赤ちゃんに授乳をするときに出てくるオキシトシンですか、愛情ホルモンのことをお述べになっていますね。

有田
これは重要なことです。じつはセロトニンと直接リンクしている脳内物質、ないしはホルモンとしてオキシトシンというものがあるんです。お母さんが赤ちゃんをだっこする、スキンシップするときに出てきて、また乳汁を分泌させる物質でもあります。しかし、オキシトシンは母親だけではなく、男も出しているんですね。男女の愛情行為でも出る。私なんか中学生のときに好きな女子と手がふれると、なんとなくうれしくなって幸せを感じたものです(笑)。
また、最近の研究では、フェイス・トゥ・フェイスで向き合って話しをするだけでもオキシトシンが出るということがわかってきた。人とのふれ合いのなかでオキシトシンを出して何が起きるかというと、脳を変えていくんです。お母さんは子どものためになんでもやってあげたくなるでしょ。自分を最優先する、それまでの価値観が変わっちゃうんです。命を投げ出してもいいという発想はふつう持ちませんからね。
つまりオキシトシンが果たす役割は二つありまして、一つはセロトニン神経の働きを増強させます。だからセロトニン活性とオキシトシンは非常にリンクしているんですね。そしてもう一つ、これは先ほど言ったことですが、スキンシップや軽いふれ合い、または近くで向き合って話すことで、オキシトシンはストレスを積極的に解消してくれるんです。これは実験で明らかになっています。
井戸端会議ってあるでしょ。これは間違いなくオキシトシンが分泌されてストレス解消になっているんですね。女性は長々と立ち話をしてオキシトシンを出しているんです(笑)。じゃあ、男はどうかというと、昔はしょっちゅう仕事帰りに赤ちょうちんで一杯やっていたものです。狭い店で肩を寄せ合い、上司の悪口なんか言ってね。じつはこれがオキシトシンの分泌になっていたんです。ストレス解消に非常に役立っていたんです。いまにして思えば、井戸端会議も、お茶飲み話も、赤ちょうちんもけっして無駄ではなかったんですね。でも、現代社会ではそれが消えつつありますけれど、ぜひ復活させたいですね。

中森
先生のお話しをうかがっていますと、核家族化の時代になる前は、私たちごく普通に親はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃん、きょうだいでスキンシップをしていましたし、家族団欒(だんらん)しておしゃべりして、近所には幼馴染やその家族が身内みたいな、ぬくもりのある生活をしていました。それが当たり前でしたし、そういう生活のなかで、みな知らずともオキシトシンを、きっと自然に分泌していたんですね。それがいまは、そうした家族関係が築きにくい時代、社会に変ってしましました。
でも私たちは、セロトニンという素晴らしい脳内物質を具えた脳を持っていることを教えていただき、勇気と希望が湧いてきました。きょうは本当にありがとうございました。


セロトニン道場のご紹介

有田秀穂さんが代表を務めるセロトニン道場は、心のストレスを薬を使わずに克服するのがテーマ。呼吸法やヨガ、アロマテラピー、フラなど、それぞれ専門の道場師範によって、セロトニン習慣を身につけます。
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